The New Yorker

米国が膨大な資金と軍事力を投じたにもかかわらず、アフガニスタンの民主化は遅々として進まず、むしろ状況が悪化しているのはなぜなのだろうか? 米政府はこれまで約8000億ドル(約80兆円)の予算をアフガニスタンにおける軍事活動に費やしている。そのうち、約1130億ドル(約11兆3000億円)が復興活動に充てられたが、これは第2次大戦後の欧州でマーシャル・プランに使われた額を超えているという。 戦争が始まった時点で、アフガニスタンの1人当たりGDPは120ドルほどだった。それゆえに米軍の司令官デヴィッド・ペトレイアスは、アフガニスタン戦略に資金をつぎ込むことをこう奨励した。 「武器の一つとして金を用いる。金は防御手段となりうるのだ」 一方、ワシントンの関心事は、死傷者をこれ以上出さないためにアフガニスタンに駐留する米兵の数を減らすことだった。 そのため米軍は、基地のメンテナンスから調理、洗濯、物流、警備までありとあらゆる仕事を現地の人間にまかせていた。2007年以降、米軍基地内には米兵の約3倍のアフガニスタン人が働いているような状況だった。 アフガニスタン人にとっても、米軍相手のビジネスはよい生活の糧だった。なかでも、米軍に物資の調達をまかされていた物流会社はその事業をどんどん拡大していった。 このビジネスによって巨万の富を築いた者もいる。 まだ20代の物流会社のオーナー、ヒクマット・シャードマンだ。 彼は、米軍との契約期間に1億6000万ドル(約160億円)以上も稼いだという。 だが、そんな彼は現在、全財産である7099万605ドル(約80億円)を守るために米連邦裁判所で争っている。 ヒクマットは米軍やアフガンの関連業者に対する贈賄罪で告訴されているが、彼はその罪をかたくなに否定し続けている。だがすでに、この事件に関与した8人の兵士が有罪判決を受けた。